欲望の捌け口

勢いで書いてます

快楽主義の哲学/澁澤龍彦  感想など

 65年に刊行された本。この時代は日本が高度経済成長の真っ只中にあったころである。

そのため、ビート族など今ではほとんど見られないような生き方を実践してた人々が新しく出てきた注目すべき生き方として紹介されているなど古さを感じるような部分もある。しかし本書で書かれてる生き方は今の時代でも僕たちを惹きつける何かを持っているようにも思う。

 今では使われることは減ってきたが、数年前に草食系男子という言葉が流行ったように現代日本の若者は(異性に対してなどに)積極的な行動を起こさず、なるべく平穏に過ごし自分を傷つけないよう日々を過ごす傾向を持つ人が多い。

だが、その草食系の人々の中にも実は「もっと○○したい」などという秘められた欲求を持っている人は多いだろう。斯くいう僕もその中の一人だし、平凡な主人公が突如世界を救う若しくは秘められし力に目覚めるだとか、日常世界が崩壊しゾンビやウイルスなどが蔓延っている世界などが描かれた漫画やアニメなどが蔓延っているのは、今の平凡な日常や無個性な自分に安心しながらも不満であることの一つの表面的な現れではないか。

そんな現代の草食系の若者にとっては、50年前に澁澤氏が煽動した生き方は非常に魅力的に感じるんじゃないだろうか。大多数の人々はいつだって破天荒で一匹狼な生き方に憧れるものだと思う。だが、現代社会でそんな生き方をすればすぐ社会からの向かい風にやられて精神を疲弊させ追い詰められていく。強靭な精神力が必要になる生き方であるからこそ、そんな生き方を出来る人はカリスマと呼ばれるのだろう。本書を読んで快楽主義を実践できる人は結局のところ心が強い人だけだろう。

しかし全体ではなく部分的な快楽主義の実践(これはある意味では嫌悪される中途半端なものだが)ならできるだろう。実践できる/できないは置いておくとしても過去の偉人たちの生き様を味わえる楽しさもある。変身願望をお持ちの人などには是非ご一読してみてほしい。

快楽主義の哲学 (文春文庫)

快楽主義の哲学 (文春文庫)